JACK
僕は和装を趣味にしています。
着物、最高にお洒落だと思うので友人らに勧めるのですが、高そう、難しそう、暑そう、寒そうというイメージが強いようです。
僕もまだまだ勉強中なのですが、着物仲間が欲しいので和装の啓蒙活動を始めることにしました。
あなたもファッションの選択肢に和装を入れてみませんか?
扇子について
第1回目は日常生活に最も取り入れやすい扇子について。
1200年ほど前、平安時代初期に京都で生まれた檜扇(ひおうぎ)が原型とされる、日本の伝統工芸品です。
平安中期になるまでは書き物や儀式用の道具として用いられていたんだそう。
使う場面や形、製造工程の違いから複数の種類に分類されるのですが、今回は普段使いを想定したカジュアルな扇について紹介していきます。
我々が普段の生活で使う扇子は大きく京扇子と江戸扇子に区別できます。
「京の雅、江戸の粋」という言葉にもあるように、京扇子は繊細で優雅、江戸扇子は簡素で遊び心があるイメージ。
扇子選びの前に、それぞれの違いについて簡単に説明しましょう。
京扇子
扇子を支える骨組み「仲骨」25~35間(本)と多めなのが特徴。
その分扇面の折り幅が狭くなっています。
仲骨に「仲彫り」と呼ばれる装飾があるものが多い印象。
柄は花鳥風月が採用されることが多く、繊細なデザイン。
扇子は竹を切るところから仕上げまで約88工程あると言われており、これらを職人らが分業して作り上げるのが京扇子の特徴です。
現在では「京扇子」と定義されるものは京都扇子団扇商工協同組合に所属する企業が取り扱っているもののみだそう。
江戸扇子
京扇子と比べると仲骨は少なく、15~18間程度と少なめで扇面の折りも広め。
そのため、両端の親骨も太く作られています。
柄は小紋柄や縞模様、動物、文字など大胆なデザイン。
縁起物や判じ物が多いのも江戸扇子の特徴です。
京扇子が分業なのに対し、江戸扇子は最初から最後まで一人の職人によって作られています。
選び方のコツ
扇子を選ぶときは「色・柄」「扇面の素材」「扇面の幅(地)」「仲骨の間(本数)」の4点に注目すると良いでしょう。
順番に見ていきましょう。
色・柄
ビジネスシーンで使うなら落ち着いた色の無地、プライベートで使うなら柄ものもいいですね。
扇子の柄には馬が9頭描かれた「馬九行く(上手くいく)」やひょうたんが6個描かれた「六瓢箪(無病)」などの判じ物から縁起物、カモフラージュ柄、キャラクターものまで様々あります。
最も目立つ部分なので、まずはここで好みを探るのが良いと思います。
扇面の素材
紙や布が代表的ですが、デニム生地、革などユニークな素材を使ったものもあります。
紙製は扇子の骨組みがやや短めなため、しなりやすく、小さい力で多くの風を生みます。
一方、布製は紙製に比べ耐久性が強く、デザインが豊富なのが特長。
片側にしか生地が貼られていないものもあるので、購入の際は裏から仲骨が見えていないか確認しましょう。
扇面の幅(地)
扇面の幅の長さによって「地長(じなが)」と「短地(たんち)」に大別されます。
しっかり風を送りたいなら地長、素材の香りを楽しみたいときは短地を選ぶと良いでしょう。
仲骨の間(本数)
仲骨の間の数によって風の強さが変わります。
扇いだ時の風は仲骨の間数が多いほど柔らかく、少ないほど固くなります。
これらのポイントに気を付けて、あなたのお好みの扇子を探してみてください。
使ってみよう!
開き方・閉じ方
別にルールがあるわけではないのでどう使おうと個人の自由なのですが、ここでは正しい取り扱い方を紹介したいと思います。
親骨(扇子の左右両端にある太い骨)をちょっと横にずらした後に手首をスナップさせてバッと一気に広げたり、片手の親指・人差し指・中指の3本だけを使って開いたりする人をお見掛けします。
これは豪快に見えたり、斜に構えている風に見えて色気が感じられません。
また、上記のやり方は「扇子が壊れやすい」という重大なデメリットもあります。
結局のところ、正しい方法で余裕を持って取り扱うのが最も美しいと感じます。
扇子を開くときはまず扇子の親骨を上に向け、右手を要(扇子をまとめている下の丸い箇所)の少し上に添えたら、左手の親指を親骨に添えて右側にゆっくりと広げます。
親骨が開けたら後は右手で横に開いていきます。
この時完全に開き切らないのが長持ちさせるコツです。
また、紙や布の扇面にはむやみに触れないよう注意。
閉じるときは右手で奥から扇子の折りに沿って丁寧に閉じるのが綺麗です。
左利きの方は左利き用の扇子もあるようなので探してみてはいかがでしょうか。
扇ぎ方とマナー
暑いとつい乱暴にバサバサ扇いでしまいがちですが、絶対にやって欲しくないのが「風を他の人に当てること」。
汗ばんだ身体を通った風は臭いの問題もありますし、パタパタとした小刻みな動きが目障りなどのトラブルの原因となります。
満員電車の中や狭いエレベーターでやられると結構不快です、気を付けましょう。
顔に直接風が当たるよう顔の横で強く扇いでいる人を多く見かけますが、これは周りに人がいないときだけにしましょう。
ここに注意さえすれば自然と正しい扇ぎ方が身につくと思います。
胸の前に構えて顎に向かってゆっくりと静かに扇ぐと余裕が感じられて色気を醸し出せますね。
浴衣のような袖口や襟口の広い服だとこれだけでも十分涼しく感じられます。
粋なワンポイント
扇ぎ方や所作で洗練された印象を作れたら、もう一歩踏み込んでお香やにおい袋などと一緒に保存して香りづけしてみてはいかがでしょうか?
紙以外の素材なら香水やファブリックミストを使うのもいいかもしれません。
ものによっては色落ちや劣化の原因になってしまうので、使うときには事前に目立たない部分でテストするのがいいでしょう。
扇子の差し袋に香りをつけて、扇子に香りを移す方法もありますので好みのやり方で試してみてください。
香水と同じでさりげなくふわっと香る程度が理想的です。
JACKの使用アイテム
松根屋 短地 唐木骨 角模様
2020年の誕生日に友人がプレゼントしてくれました。
松根屋は大正3年(1914年)創業の東京・浅草橋の扇子専門店です。
参考 松根屋公式サイト 東京 台東区 浅草橋の扇子専門店松根屋公式サイト
この扇子は京扇子ですね。
短地の紙扇子で、骨に使われている唐木が良い香り。
セットの差し袋はトンボ柄です。
トンボは前にしか進まないことから不退転の精神を表すものとして「勝ち虫」と呼ばれる縁起物。
戦国時代には武士に好んで使われたモチーフです。
転職したばかりの僕に送ってくれた友人の無言のエールを受け取りました。
こういうプレゼントの選び方は本当に粋だと思います、さすが。
浅葱系の落ち着いた色合いなので、ビジネス用扇子として持ち歩くことにしました。
ハセガワ 竹 45本骨 唐木短地 両面柄
こちらは2012年に当時お付き合いしたてだった妻が、僕に初めて誕生日プレゼントとして贈ってくれた扇子。
こちらも京扇子、短地の紙扇子ですね。
竹はまっすぐ伸び、生育が早く丈夫なので「気高さ」「力強さ」の象徴。
節があることから「節度のある」、常緑であることから「清浄である」ことも表しています。
見た目が涼しげなところもお気に入り。
伊場仙 江戸扇子 No.20 良きこと聞く
伊場仙は天正18年(1590年)創業の東京・浅草橋の扇子専門店です。
柄に使われているのは斧・琴・菊で「
斧と菊は形をデフォルメされていますが、琴だけは漢字のまま使われています。
七代目市川団十郎の「鎌〇ぬ(かまわぬ)」に対抗して、三代目尾上菊五郎が使い始めたものだそう。
江戸扇子はお祭りのときに浴衣の帯に挿して歩きたいですね。
ちなみにお祭りで江戸扇子を使うときは全開ではなく、1/3か1/4だけ開いて扇ぐのが粋だとされています。
正直この扇ぎ方だと涼しさはイマイチですが…。
江戸っ子の意気地が感じられます。
麻絲商会 近江の麻 ベージュ
夏着物の仕立てが思いの外高かったので、悔し紛れに買った麻の扇子です。
こちらは地長の近江扇子。
糊が利いているのか、開くときに固い手応えがあります。
ウッドビーズがついており、差し袋から抜き取りやすいのが嬉しいですね。
いずれ夏着物に合わせて使ってみようと思います。
少林寺拳法 東京進出60周年記念
実は夫婦共に少林寺拳法の修行をしているのですが、こちらは2017年に東京進出60周年記念式典にお招きいただいた際に記念品としていただいたもの。
地長の紙扇子ですね。
修行の帰り道や懇親会の席で使用していたのですが、現在は一時的に退会しているのでしばらくは使う機会がなさそうです。
まとめ
おそらく日常生活にもっとも取り入れやすい和装アイテム。
扇子の種類を知っていると自己表現の幅が広がって楽しくなりますね。
正しい扱い方やマナーを学んだので所作もばっちりですね!
今年の夏は扇子で涼を愉しもう!